「教師を 辞めます」 その決断の前に 一度お話しをしましょう。
室長ブログ
2025.2.1
「教師を 辞めたい」との相談がありました。
教頭先生からです。教諭時代には、研究部の活動や生徒指導にも全力で取り組んできた小学校の先生です。今年の春に新任教頭として赴任したばかりです。1学期は、初めての仕事ばかりで、兎も角無我夢中に取り組んできました。
夏休みも終わり、2学期が始まった頃、校長から「あなたは教頭には向いていない。私の指導も限界だ」と言われたというのです。口惜しさと、情けなさで、「退職しようと思う」との相談でした。
校長は、定年間際の女性校長です。やり手校長で、校長会でも発言力を持っています。その分、リーダーシップも有り、学校の課題も次々に改革してきました。
その学校に赴任してきた新任教頭は、現状把握に精一杯で、職員や保護者等からの質問や要望にも即応できる余裕が有りませんでした。やがて、職員は教頭を素通りして、校長に直接話を通すようになりました。そのような状況が常態化するようになり、先程の校長の言葉となったのかも分かりません。
教頭先生のお話を伺っていくうちに、問題は、教頭ではなく校長にあることが分かりました。
やり手の校長と言われるだけあって、職員の話もその要点をしっかり捉え、アドバイスも的確です。忙しい職員にとって、そのスピード感は魅力です。自ずと教頭を素通りするようになったのでしょう。
また、学校組織は、くし形組織です。
校長・教頭の下は、学年主任も担任も教務も給食担当も、くしの歯の様に、横並びです。
序列が無いのです。校長・教頭は管理職として認められていても,他は対等という意識です。勿論、年長者を敬う常識はありますが。
近年になって、主幹と呼ばれる中間管理職的役職者が誕生しましたが、職員間には、管理職との意識はありません。
そのような状況で、校長にとっては唯一の管理職立場である教頭への依存度は高く、期待も大きいのでしょう。
教頭が管理職的立場で、力を発揮すれば、その上の校長は更に強力になります。教頭が非力であることは、許せないのかも知れません。
しかし、新任教頭が力を発揮できないのは仕方ありません。特に、教諭時代に教務主任の仕事を担ってきたなら教頭の仕事の一端を経験していますが、生徒指導や教科指導を担ってきたなら、教頭が作成する膨大な教務関係書類、学校設備関係書類、経理関係書類、保健書類等を前に右往左往するのは当然です。
それも1年間経験すれば、優秀な人材ですので、2年目からは余裕が生まれます。
校長は、1年目の教頭を育てることが、その役割の重要なポイントであることを自覚する必要があります。その意味で、今回の出来事は、校長に問題があると申し上げたのです。
私は、彼に1年間の辛抱だと申し上げ、1年を終えてまだ辞めたいと思うなら、その時に再度カウンセリングを行いましょうと伝えました。
あれから10年近くが経ちましたが、彼は校長を勤め、間もなく定年です。