カウンセリング事例 <高等学校の男性教師>

室長ブログ

 公立の進学校に勤務する30代の男性教師 A先生。教科は数学。研究家肌のA先生は、ただ解き方を教えるのではなく、数学的な見方や考え方に気付かせることに心がけて授業に取り組んでいる。その為、数学が分かる、面白といった生徒の声も多い。数学の大会で、生徒を入賞させるなど、生徒・保護者からの信頼も厚い。

 管理職は、A先生を、学校の研究プロジェクトの長に据え、彼のリーダシップに期待を寄せていた。

 

 A先生が、相談に来たのはそんな中、2学期の中頃であった。研究プロジェクトの長が、重荷であるとの相談。そのプロジェクトは、学校の将来像を担うと期待され、管理職の思い入れも大きく、管理職からの指示も多く、その指示が自分の考えと合わなくなって、長としての役割が担えないという訴えである。

 

 カウンセリングを続けていくと、数学大会への参加や、プロジェクトの長の役割も、自分の本意ではなく、本当は研究職のようなことをやりたいと思い続けて来たとのことであった。そして、そんな折、大学の先輩から、大学での研究助師への就職の誘いがあり、書類選考も通過し、後面接だけとなり、そこへの転職も考えているとの話である。

 

 数度のカウンセリングで、転職後の見通し、プロジェクトの長を続けるための課題、学校を異動して新しい環境からの再出発についてなどを、話し合った。

 

 学校に残ったり、転勤することは、子どもや奥さんを扶養する上での収入面では心配はないが、仕事への意欲がわかないと言う。研究職への転職は、将来への期待も大きく、強い意欲はあるが、収入面では半減し、そのことで生活や仕事に影響があることが懸念されるとのことだった。

 

 A先生は、結局研究職の道を選択した。その結論は、正しかったのかどうかは分からない。しかし、カウンセリングを通して、それぞれの選択の先にある可能性や課題、障壁について多くの想定をした上での決定であったので、現在は、前向きに挑戦されていることと信じている。

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